その他
白菊町民家改修計画「緑酒伝助」「会員制ゲストルーム」
竣工 | 2024年 1月 |
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分類 | その他 |
所在地 | 金沢市白菊町 |
規模 | 木造2階建て |
『どこか懐かしい佇まいのある隠れ家』をコンセプトに、金沢市西茶屋街の隣、白菊町に佇む築100年の歴史を刻む民家を、新たな飲食店として改修しました。施主の思いは、『隠れ家+遊び心、秘密基地のようなワクワク感』。この想いに共感し、古材を活かす創意工夫を行いながら計画を進めました。改修に際してのキーワードは『懐かしさ』、『遊び心』、そして『ワクワク感』。金沢の風情に調和しながらも、新しい物語を紡ぐために、古いものへのリスペクトと現代のエッセンスを巧みに取り入れることに力をいれました。この隠れ家では、築100年の歴史が生み出す独自の雰囲気が、訪れる人々に懐かしさと新しさの両方を感じさせる特別な体験を提供する場となっています。
「当時の姿に復元」
設計を進めるにあたりまずは外観の復元を考えました。既設外観はトタンの外壁とアルミフェンスで囲まれており同じく昭和時代に改築されたであろう風呂場とトイレの空間が家屋のシルエットを変形させていました。一見どこにでもある一般住宅の姿でしたが、白いトタンをめくり確認すると木板の下見板張りや当時の漆喰仕上げが残っておりそれらを復元することで日本伝統の木造家屋の外観が寺社風景の景観に付与すると考えました。暖簾や置き看板、内照式のサインのような商業的な要素は最小限とし「秘密の隠れ家」のようなひっそりとした佇まいとしました。
「二種のアプローチと新しい物語」
住宅時の「表玄関」と「勝手口」を、店内への出入り口として転用しました。表玄関は二階に続く会員制のゲストスペースへの入り口となり、一方で勝手口は一階に構えた「割烹」の専用入口として機能しています。店内は古材を巾木や腰板などに転用しながら工事を進めました。当時の柱、土壁、小舞仕上げ、竿縁の木天井など、長い年月を経た木素材の経年変化や風合いは、どんな新しい素材にも勝ると考えています。改修の際には、組手仕口や当時の技法や生活の名残はそのままの状態を残し保存しました。これらをゲストに見せて「愉しむ空間」を提供することを目指しています。改修の名残が、歴史や技術のリスペクトと共に、空間全体に温かみと建物独自の個性を添えて「大事なゲスト」をもてなし「緑酒伝助」の新しい物語をサポートします。
「更新と転用、歴史を尊重したアプローチ」
創意工夫を念頭に解体作業を進める中で、多様な改修履歴が浮かび上がり、その都度、現場スタッフが集まり検討しながら工事を進めました。全ての空調設備や照明などの設備機器は新たなものと入れ替え、老朽化した構造部材については、二階フロアをジャッキアップし部材の交換を行いました。床下の木板や、庭の木々から伐採された過多な木の幹をカウンターの支持部材として転用しました。現場で利用可能な資材を最大限に活用し、部材の転用と循環を試行錯誤しながら、創り上げた空間となりました。このデザイン手法は、環境にやさしく、同時に歴史や当時の素材を尊重したアプローチとなっています。再生可能な資源を有効利用することで、空間は新しさと独自性を保ちながらも、過去の痕跡や物語を受け継ぐ空間となりました。