医療施設
医療法人社団 博友会 金沢西病院理事長室改修
竣工 | 2021年 12月 |
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分類 | 医療施設 |
所在地 | 金沢市駅西本町 |
規模 | 鉄骨造 地上5階 |
受賞 | 第50回いしかわインテリアデザイン賞2022 INTERIOR KOGEI賞 |
『能文化を伝える工芸建築』
-はじめに-
部屋の一室を、開院記念会議室に改修するプロジェクトです。 菊地名誉理事長が長きにわたり愛した「能」をデザインに取り入れ、「病院の『これまで』と『これから』をつなぐ場所」をコンセプトとしました。石川に根付く「工芸」を建築空間に融合させた「工芸建築」として表現し、名誉理事長の創設以来の想いを受け継ぎつつ、進化する西病院の象徴となるような空間を目指しました。
-能を表現する-
能舞台を空間全体に現代的なデザインとして落とし込みました。
正面となる壁には、能舞台の象徴である松の木を抽象的なデザインで表現し、工芸との融合により壁全体を作品として仕上げています。作品が際立つよう間接照明で優しく照らし、奥行のある壁面を演出しています。
能舞台は元来、屋外に建てられていた建築です。そのことから、天井面では内と外のエリア分けを表現しています。内を表現する舞台上には格子天井、外を表現するエリアには、曲線にデザインしたミラーを貼り付け、空の奥行や雲のゆらぎを表現します。これにより室内を広く感じさせ、明るく開放感のある空間をつくります。
-工芸作家と共に作る「工芸建築」-
九谷焼伝統工芸士である浅蔵一華氏との共作で空間をつくりました。
氏描画の特注クロスに作陶の陶芸作品を融合しました。
氏の特徴である、現代的で華やかな文様表現は、空間を繊細かつ緻密に作り上げます。
工芸を制作する時に用いるスケール感と建築のスケール感をすり合わせるため、多くのパターン・バランスを検討しました。
「松」からデザインした正面の陶板、特注クロス。「竹」をモチーフとした右面の特注クロス。「梅」からデザインした左面の梅の陶板。室内を歩くと雲を表現した天井ミラーに、松・竹・梅が映りこみ、人々の想像力を喚起し、新たなアイデアが生まれる空間としました。
気品と優雅さをもつ浅蔵先生の作品が建築空間に溶け込み、華をもつ新たな工芸建築を表現することができました。